地獄見の所兵衛 |
仙台市/宮城野区/岩切/青麻沢 |
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昔、この里に、 所兵衛 という働き者が住んでいた。ある日、どこかの老人が所兵衛の家の前にたち、一夜の宿を頼んだのだが、心の優しい所兵衛は、この頼みを快諾した。 その夜、老人は、「 泊めていただいた御礼に、お金でもあげたいのだが、私は貧乏なので、それもできない。 お金のかわりに、ある物語をしてあげよう 」と言って、衣の袖を所兵衛の顔にかけ、“ 地獄の百三十六ヶ所巡り ”という物語を話し始めた。 すると不思議なことに、老人のもっている不思議な力のためなのか、なんとも言いようのない夢心地になり、 所兵衛は、この地獄を見物するという物語が、夢なのか現実なのかの区別もつかなくなった。 気づいたときには、すでに朝になっていて、その老人は、「 今夜のことは、あまり人には話さないでくれよ 」と言って、どこかへ姿を消してしまった。 その後、所兵衛は、この物語が、あまりにもリアルだったので、親しい友人にだけ老人のことを話した。ところが、 どうしたことか、隣の家の、おしゃべり婆に、その話を聞かれてしまい、たちまち、この里で、“ 地獄見の所兵衛 ”と呼ばれるようになり、 さらに、この評判が仙台にまで伝わり、庶民のみならず、仙台藩の名門の屋敷で地獄の百三十六ヶ所巡りを話すまでになってしまった。 この老人に会うまで所兵衛は、ずっと不幸が続き、たいそう貧乏であったのだが、 地獄の百三十六ヶ所巡りのおかげで、その後、生活に困窮することはなくなったという。
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