恐山の鬼猿 |
気仙沼市/本吉町津谷松岡 |
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昭和 初期、この里にあった津谷案内所の前のバス停で三人の女性がバスを待っていたのだが、その中の一人が、突然、不思議な話をしはじめた。 二十年ほど前、私が 恐山 に行ったとき、 津谷 の出身だという美しい女性に会ったのですが、私が、「 なぜ、あなたは、このような場所にいるんですか? 」と聞いたところ、その女性は、「 私は、 鬼猿 に誘拐されて、無理矢理、夫婦にさせられてしまいました 」と答えたので、私が、「 このまま、一緒に逃げましょう! 」と言ったとき、ピカピカ輝いている毛皮を着て、眼光が鮮血のように紅く光っている鬼猿が、ゆっくりと、私に向かって歩いてきました。私が、あまりの恐怖で体が動かず、その場に立ちすくんでいると、その女性が、必死に鬼猿を制止してくれたのですが、それでも、鬼猿が、どんどん私に近づいてきたので、私が、無我夢中で、護身用の刀で鬼猿の手に斬りかかると、鬼猿が少し動揺したので、その隙に一目散に逃げ帰ってきました。 この話を近くで聞いていた里人が、「 鬼猿?そんなものが、この世にいるわけないだろう! 」と思って笑ったものの、なんとなく気になったので、そのことに関して調べてみたところ、約二十年前の早朝、畑仕事に行ったまま行方不明になっている女性がいることがわかった。そして、その女性の特徴が、バス停の前で話されていた女性の特徴と一致したため、一時、この里は騒然としたという。
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