伝承之蔵

三両の話
丸森町

   昔、この里に、人の話を聞くことが大好きな里人がいた。ある日、その里人が、“ 話方 ”と書かれている店の看板を見て、「 面白そうだな、その話とやらを聞いてみよう 」と思い、料金の一両を払って店に入った。しかし、その店では、「 大きな木の下より、小さな木の下 」とだけ話をして、さっさと店を閉めてしまった。その里人が、「 あれだけで一両か、なんとも高い料金だったなぁ… 」と思いながら歩いていると、また、話方と書かれている店の看板があり、「 今度は、面白い話が聞けるだろう 」と思い、料金の一両を払って店に入ってみたのだが、今度の店でも、「 茶屋で休まないこと 」とだけ話をして、さっさと店を閉めてしまった。その里人は、「 今日は、変な話ばかり聞くなぁ… 」と思いながらも、また別の同じような店に、料金の一両を払って入ってみたのだが、その店でも、「 刀は鞘におさめておくこと 」とだけ話をして、さっさと店を閉めてしまった。

   その里人が、「 あんなつまらない話で、三両もとられた 」と、ブツブツ言いながら家に帰る途中、突然、ものすごい雷が鳴りはじめたので、どこかに隠れようとしたのだが、「 そういえば、『 大きな木の下より、小さな木の下 』だったな 」と、最初の店での話を思い出し、近くの小さな木の下に隠れた。すると、その直後、ものすごい音とともに、大きな木に雷が落ちた。その里人は、「 一両もとられて高いと思ったが、おかげで命が助かった 」と喜んで家に帰る途中、ちょうど、茶屋があったので、団子でも食べようかと思ったのだが、「 そういえば、『 茶屋で休まないこと 』だったな 」と、二番目の店での話を思い出し、茶屋の様子を見ていたところ、その茶屋の団子を食べた人たちが、次々に死んでいくのが見えた。その里人が、「 どうやら、あの茶屋は、盗賊がやっている茶屋だったようだな。また、命が助かった 」と喜んでいるうちに、家に着いた。その里人が、なんとなく、戸の隙間から中を覗いてみると、頭を手ぬぐいで覆った男が、妻と添い寝していた。その里人は、「 この野郎ぅ 〜 ! 」と思い、その男と妻を、刀で斬りつけようとしたのだが、「 そういえば、『 刀は鞘におさめておくこと 』だったな 」と、三番目の店での話を思い出し、家に入って、妻に、「 俺のいない間に、何をしてるんだ! 」と叫んだところ、妻は、「 これは、あなたがいないとき、知らない男が家に入って来たら嫌だから、徳利に手ぬぐいをかぶせて作った人形よ! 」と答えた。料金を三両もとられて、高い高いと思っていたのだが、結果的には、たったの三両で、大切な命が三つも助かったという話である。

参考 『 丸森町史 』
現地で採集した情報