極楽浄土に行った男 |
丸森町 |
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昔、この里に、熱心に念仏を唱える 一条喜代太 という者がいた。ある冬、大きな窯で炭焼きをしていたとき、ついつい眠くなって寝てしまったところ、阿弥陀様が夢に現われ、「 おまえは本当に信心深いので、褒美に極楽浄土を見せてやろう 」と言って、喜代太を極楽浄土に連れて行った。極楽浄土では、甘い蜜の香りが漂い、多くの綺麗な花が咲いていて、珍しい動物たちが、のんびりと楽しそうに遊んでいた。しかし、いくら楽しいところでも、ずっと住むわけにはいかないので、喜代太が、阿弥陀様に、「 そろそろ、もとの世界に帰りたいのですが… 」と頼んだところ、阿弥陀様は、「 おまえが、『 極楽浄土に行ってきた 』と言っても、誰も信じないであろう。おまえが極楽浄土に来たという証拠に、一週間だけ声が出ないようにしておいてやる 」と言うと、スッーと姿を消した。喜代太が、ハッと気づくと、不思議なことに、炭焼きのための大きな窯の前に座っていた。そして、次の日の朝、喜代太が起きると、阿弥陀様が言ったとおり、まったく声が出せなくなっていた。 声を出せなくなった喜代太を心配した家族は、「 医者を呼べ! 薬はどこだ? 」などと、大騒ぎしたのだが、喜代太だけは冷静に、「 田町 に住んでいるおじさんを呼んでくれ 」と紙に書いて家族にわたし、田町のおじさんが家に来ると、阿弥陀様に極楽浄土に連れて行ってもらったこと、一週間後に声を出せるようになることを紙に書いて知らせた。すると、その八日後、もとのように声が出るようになると、家族たちは、「 喜代太は、本当に極楽浄土に行ったんだ! 」と驚き、喜代太は、「 やっぱり、極楽浄土に行ったのは夢ではなかったんだ! 」と思って感動し、いっそう熱心に念仏を唱えるようになったという。
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