伝承之蔵

義理猫情
南三陸町/歌津

   昔、この里では、その猫の種類によって棲む場所が決められており、 貞任山 にはトラ猫が、 鳥ヶ森 には三毛猫が、 田束山 にはカラ猫が、それぞれ棲んでいた。ある日、この里に住んでいる長者の一人娘が、無理矢理、悪代官の花嫁にさせられようとしているという噂を聞いた三つの山の猫たちは、緊急会議を開いて、その対応を協議したのだが、ちょうど、そのとき、一番の実力者であった貞任山の親猫が、京の都で開かれている全国猫会議に出席していて不在だったため、その緊急会議では、なかなか意見がまとまらなかった。そこで、困り果てた猫たちが、田束山にある 清水寺 の薬師如来に、「 貞任山の親猫を、この里に戻してください! 」と御願いしたところ、突然、貞任山の親猫が京の都から戻ってきた。不思議に思った猫たちが、「 どうして、戻ってきたんだ? 」と、貞任山の親猫に聞いたところ、貞任山の親猫は、「 おれの夢に薬師如来が現われて、この事件のことを教えてくれたので、急いで戻ってきたんだ! 」と答え、「 いつも世話になっている長者のために、必ず、長者の娘を守るぞ! 」と叫び、そのまま、猫たちを引き連れて悪代官の屋敷を襲い、長者の娘を救いだした。娘を救いだしてもらった長者は、たいへん喜び、「 いつもは、犬猫などと軽蔑されているが、この義理人情の厚さは人間でも及ばない 」と言って涙を流し、すべての猫たちに感謝したという。

参考 『 歌津町史 』
現地で採集した情報


現地レポート

上の写真は、貞任山。この山には、トラ猫が棲んでいた。



上の写真は、鳥ヶ森。この山には、三毛猫が棲んでいた。昔は、今よりも多くの木々があったのだが、太平洋戦争の時に 松根油 をとるため、それらの木々を伐採してしまった。


これは、田束山の頂上にある看板。この山には、カラ猫が棲んでいた。



これは、近くにあった案内図。



これは、田束山の頂上から見た風景。絶景かな、絶景かな。カラ猫たちは、毎日、この風景を見ていた。



この伝承の清水寺は、現存していない。上の写真は、清水寺跡。清水寺の薬師如来は、一生に一度だけ、信者の願いを叶えてくれたという。


平成 17 年 10 月 15 日 ( 土 ) 掲載
令和 6 年 2 月 9 日 ( 金 ) 改訂


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