伝承之蔵

大蛇の満腹草
大河原町

   昔、この里にある、ある大きな山に、茸や蕨などを採りにきた里人を、まるまる飲み込んでしまうという恐ろしい大蛇が棲んでいたのだが、勇気のある里人たちは、危険を承知で山に入り、豊富に採れる山菜を採って生活していた。ある日、この里に住んでいる平五郎という若者が、一人で山に入って茸を採っていると、ある沢のあたりから、 「 ギャー ! 」 という叫び声が聞こえた。驚いた平五郎が沢に行ってみると、ある里人が大蛇に飲み込まれているところだった。茂みに隠れた平五郎が、ガタガタと恐怖に震えながら、その様子を見ていると、里人を飲み込んで腹を大きく膨らませた大蛇は、突然、沢のそばに生えている草を食べはじめた。すると不思議なことに、さっきまで人間の形に膨らんでいた腹が、みるみるうちに元の太さに戻っていった。そして、しばらくすると、大きな体をニョロニョロと這わせながら、その大蛇は、山の奥に消えていった。

   平五郎は、 「 へぇ 〜 、食べたものを早く消化する草か … 。あの草を薬草として売ったら、大金持ちになれるぞ ! 」 と思い、採った茸をすべて捨てて、代わりに、その草で籠をいっぱいにして家に帰った。ちょうど、その夜は、この里で、大食い競争をする日だったので、平五郎は、 「 これはラッキーだ ! この草を食べれば、いくら御飯を食べても大丈夫。必ず優勝できるぞ ! 」 と思い、はりきって、その大食い競争に参加した。そして、数名の若者によって大食い競争がはじまると、平五郎は、腹が破裂するほど食べに食べた。

   しかし、それでも、昨年の大食い競争で優勝した留治の食いっぷりにはかなわなかったので、平五郎は、このときとばかりに、懐から、 “ あの草 ” を取り出して、ニコニコ笑いながらムシャムシャと草を食べはじめた。そして、 「 さぁ 〜 、じゃんじゃん食べ続けるぞ 〜 ! 」 と、大きな口をあけた瞬間、なぜか、平五郎の体は、みるみるうちに溶けてしまい、その場には、平五郎が食べた御飯だけが残った。その後、里人たちが、その草を調べてみたところ、その草は、 「 食べたものを早く消化する草 」 ではなく、 「 人間の体を溶かしてしまう草 」 ということが判明したという。


平成 25 年 9 月 2 日 ( 月 ) 掲載
参考 『 大河原のざっとむかし 〜 大河原の民話と伝説 〜 』
現地で採集した情報