伝承之蔵

娘の婿にふさわしいのは誰だ ?
大河原町

   昔、この里に、ある長者が住んでいた。その長者には、遠くの里からも結婚の申し込みがあるほど美しい娘がいたのだが、その長者は、みえっぱりだったので、 「 俺は、うちの娘を、この世で、いちばん偉くて強い者の嫁にする 」 と言い残して、そのまま、娘の婿を探す旅に出た。長者は、 「 まぁ、いちばん偉いのは、天地を照らして私たちに恵みを与えてくれる太陽だな 」 と思い、太陽のところに行って、娘の婿になってくれと頼んだ。ところが、太陽は、 「 私より強い者がいるよ。雲さ。雲が出てくれば、私なんか簡単に隠されてしまうからね 」 と言って断った。

   そこで、長者は、次に雲のところに行って、娘の婿になってくれと頼んだ。すると、雲は、 「 私より強い者がいるよ。風さ。風が出てくれば、私なんか簡単に吹き飛ばされてしまうからね 」 と言って断った。そこで、長者は、次に風のところに行って、娘の婿になってくれと頼んだ。すると、風は、 「 私より強い者がいるよ。壁さ。いくら強く風が吹いても、壁はピクリともしないからね 」 と言って断った。そこで、長者は、次に壁のところに行って、娘の婿になってくれと頼んだ。すると、壁は、 「 私より強い者がいるよ。鼠さ。だって、私のことをガリガリ食べてしまうんだからね 」 と言って断った。

   そこで、長者は、次に鼠のところに行って、娘の婿になってくれと頼んだ。しかし、その後、長者が鼠のところから屋敷に帰ってくると、鼠に何と言われたのかを誰にも話さずに、独りで落ち込み、もう二度と、 「 この世で、いちばん偉くて強い者の嫁にする 」 とは言わなくなった。そのため、里人たちは、 「 いったい、長者は鼠に何て言われたんだ ? あんなに落ち込むなんて … 」 と噂したが、ついに、鼠が長者に何と言ったのかは、わからなかったという。


平成 25 年 12 月 8 日 ( 日 ) 掲載
参考 『 大河原のざっとむかし 〜 大河原の民話と伝説 〜 』
現地で採集した情報