伝承之蔵

細木薬師様
大郷町

   ある秋の日、突然、ものすごい雷鳴とともに大雨が降ったため、この里を流れていた川が増水し、一瞬にして堤防を破壊。屋敷も田圃も濁流にのまれ、すべてが水没してしまった。里人たちは何もすることができず、ただただ逃げることしかできなかったのだが、逃げている途中、ふと濁流を見てみると、その中に 御灯明 が浮いたり沈んだりしながら流されていた。不思議なことに、お灯明の明かりが強くなるたびに、今まで真っ暗だった里が明るくなり、恐ろしい濁流の音も小さくなっていった。 「 これは不思議なこともあるものだ … 」 と思った里人たちは、その御灯明に向かって洪水が収まることを祈願すると、みるみる御灯明の明かりが増していき、すぐに洪水がおさまった。

   洪水がおさまった瞬間、その御灯明が川の岸辺にとまって消えたので、里人たちが、お灯明が消えた場所に行ってみると、一本の細い木の上に薬師如来が神々しく立っていた。 「 この里を洪水から救ってくれたのは、この薬師如来に違いない ! 」 と思った里人たちは、いつまでも薬師如来への感謝の気持ちを忘れることがないように、立派な祠を建てて薬師如来を祀った。そのため、いつしか、里人たちは、この細い木の上に立っていた薬師如来のことを、 “ 細木薬師様 ” と呼ぶようになったという。

参考 『 おおさと 昔かだり 』
現地で採集した情報


現地レポート

おおさと 昔かだりには、 “ 村 ” との記述があるだけで、どこの村なのか特定されておらず、どこの細木薬師なのかも特定されていない。因みに、細木薬師に関しては、 大衡村 に同様の伝説がある上、細木薬師も現存している。確かな証拠があるわけではないのだが、大衡村と大郷町は地理的にも近いので、大衡村の伝説を引用しているうちに、そのまま大郷町の伝説として定着してしまったのかもしれない。


これは、大衡村にある細木薬師。



平成 27 年 10 月 3 日 ( 土 ) 掲載


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