伝承之蔵

虚無僧流れ
大郷町/羽生/堤下

   昔、この里に、 惣右衛門 という金持ちが住んでいて、惣右衛門には 小夜 という娘がいた。優しくて美しい小夜には、多くの縁談があったのだが、従順であった小夜は、両親が選んだ隣の里の金持ちと結婚することにした。ところが、結婚した後、姑に嫌われてしまった小夜は、毎日、いじめられ、我慢できなくなった小夜は、ある夜、屋敷を飛び出してしまった。

   その日の真夜中、小夜が 勢見ヶ森 の中の道を歩いていると、突然、木の陰から覆面をした大男が現われ、荷物を奪った後、小夜をレイプしようとした。驚き恐れた小夜が悲鳴をあげると、不思議なことに、その大男の体が宙に浮き、5メートルほど吹き飛ばされた。大男は、 「 この 阿魔 ! やりやがったな ! 」 と叫んで、再び小夜を襲おうとしたのだが、小夜の近くには、月の光に照らされた人影があり、そこには、美しくも強そうな一人の若い 虚無僧 が立っていた。その強そうな虚無僧を見た大男は、小夜の荷物を捨てて、一目散に逃げ出した。

   丁寧に御礼をした後、安心した小夜が、その虚無僧の心の温かさにふれ、少しずつ自身の境遇を話し始めると、虚無僧も涙ながらに小夜の話に耳を傾けた。こうして咲いた二人の恋の花は、月の光に包まれながら、静かに森の中に消えていき、その後、再び、この里に二人が現われることはなかったという。

参考 『 おおさと 昔かだり 』
現地で採集した情報


現地レポート

これが、勢見ヶ森。現在は、勢見ヶ森公園となっている。おおさと 昔かだりによると、この伝説のタイトルの “ 流れ ” とは、 “ 長峰 = 長根 = ながね ” のことかもしれないとのことなので、 “ 虚無僧流れ ” とは、 「 虚無僧が小夜を助けた勢見ヶ森の長根 」 という意味なのであろう。


因みに、勢見ヶ森公園の頂上には、勢見ヶ森古墳がある。



頂上からの風景。



平成 27 年 11 月 17 日 ( 火 ) 掲載


地図