伝承之蔵

床寒山の美女
大郷町/ 大松沢/成田川

   昔、この里の若い が、 床寒山 で大木に登って枝を 伐って いたところ、持っていた鉈を木の下にあった池に落としてしまった。しばらくすると、その池の水面に美しい娘の姿が映ったので、樵は、 「 なんだ ? あの娘は … 」 と思い、木の下に降りて水面をジッと見てみると、その娘は、 「 私を見たことは忘れてください。 そのかわり、あなたが池に落とした鉈を探してあげます。約束してくれますか ? 」 と樵に話しかけてきた。そして、樵が、 「 誰にも話さないから、私の鉈を探してください 」 と答えた瞬間、娘は音もなく水面から消えた。

   驚き恐れた樵が、人の気配を感じて後ろを振り向くと、いつの間にか娘が鉈を持って立っていて、 「 大切に使ってくださいね 」 と言って樵に鉈を渡すと、娘の姿はス 〜 ッと消えてしまった。樵が、ふと、娘が消えた場所を見てみると、そこには立派な 黄楊 の櫛が落ちていた。その櫛を拾った樵は一目散に屋敷に帰り、すぐに鉈と櫛を仏壇に納めて、娘のことは、一生、誰にも話さないと誓ったという。

参考 『 おおさと 昔かだり 』
現地で採集した情報


現地レポート

この伝説の娘は、奥州の 胆沢 に住んでいる軍治兵衛という男性に会いに行く途中、この里に仮の宿をとり、この池を鏡にして身を清めていたという。そのため、おおさと 昔かだりでは、 “ 鏡が池 ” というタイトルになっていた。この娘は、京の都の 松浦佐用姫 だったと伝えられ、この後、ある城の人柱となって世を去った。


上の写真が、床寒山。この山の麓に住んでいる古老に、鏡が池の場所を聞いてみたところ、 「 私は、ここに七十年も住んでいますが、そんな池の話は聞いたことがありません 」 とのことであった。


おおさと 昔かだりによると、その後、鉈と櫛がどうなったのかは誰も知らないとのこと。因みに、この伝説の鉈は、池に落とした時には使い古したものであったが、娘から受け取った時には、黄金色に輝いていたという。


平成 27 年 12 月 24 日 ( 木 ) 掲載


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