伝承之蔵

柳沢寺の怪
利府町/春日/柳沢

   昔、この里に、 柳沢寺 という寺があったのだが、この寺に行った者は、誰一人として帰ってこなかったので、里人からは、“ 魔の寺 ”として恐れられていた。 ある日、ある武士が、その真相を確かめようと、柳沢寺の山門をくぐって、客殿から奥の院へ進むと、公卿の姿をした美しい女性が現われた。 その武士は、「 さては、これが怪物の化身だな 」と思い、その美女と格闘の末、美女の頭部を斬りとると、その美女は、首から鮮血を流しながら逃げていった。 武士が、その血の跡をたどっていくと、そこには、大きな蟹が血まみれで死んでいたという。

参考 『 利府町誌 』
現地で採集した情報


現地レポート

残念ながら、この伝承の柳沢寺は現存していない。



古老の話によると、里人たちは、この伝承の大きな蟹の死骸を柳沢寺の近くに葬り、その場所を、“ 蟹ヶ沢 ”と呼び、その場所がある森を、“ トガ森 ”と呼んだという。上の写真が、トガ森。柳沢寺跡に行くには、赤い矢印の道を進む。


ここが、入口。



ここを、上っていく。



ずっと…。



ずぅぅぅ 〜 っと、上っていく。



しばらくすると、道が二つに分かれるので、左の道を進む。そして、行き止まりのあたりが、昔、柳沢寺があった場所。


上の写真が、その場所。ここが、柳沢寺跡。利府町誌には、「 約五畝歩位の面積で、今は金生囲の田となって、耕作されている 」とある。古老の話によると、確かに、昔、ここに田があって、耕作していた者がいたという。しかし、現在は、雑木林となっている。


これは、この伝承に関連している場所の全体図。利府町誌には、「 年代は詳かではないが小野田村( 今の春日 )にある愛宕神社の北方、黒森、県有林地内に『 がに沢 』と言われるところがある 」とある。がに沢と、前述の蟹ヶ沢は、同じ場所をさしているのだが、黒森は、愛宕神社の東側にあるので、利府町誌の記述は誤りであろう。恐らく、トガ森と黒森を混同していると思われる。


これが、愛宕山。古老の話によると、この愛宕山の頂上に、愛宕神社があったという。この山に登って、頂上あたりを調査したのだが、何もなかった。しかし、古老は、立派な鳥居や祠があったと証言しているので、もっと詳しく調査すれば、愛宕神社の跡は発見できると思われる。因みに、愛宕神社への道は、台風による土砂崩れでなくなってしまった。


蟹ヶ沢という言葉でも分かるように、昔、このあたりは沢だった。古老の話によると、昔、台風で図の池の堤防がきれて、水があふれだしたことがあったという。そのとき、池の底から、数個の石が転がってきたのだが、その石には、法名が刻まれていた。当時、「 この石は、柳沢寺から沢に沿って転がってきたのではないか 」と噂になったらしいが、詳細は不明とのことである。


これが、その池。上の赤丸のあたりが崩れて、水があふれだした。そして、下の赤丸のあたりに、法名が刻まれた石があった。


これが、法名が刻まれていたという石。



ゴロゴロ転がっている。



残念ながら、現在は、すりへっていて文字を読みとることはできないという。



上の写真の右は、愛宕山。赤丸は民家。この民家と愛宕山の間には湧き水がでていて、この民家では、その湧き水を使用しているのだが、今までに、一度たりとも、この湧き水が涸れたことはなく、ときどき、この湧き水を通しているパイプの中に、小さな蟹が入っていることがあるという。


平成 18 年 3 月 22 日 ( 水 ) 掲載
令和 5 年 8 月 9 日 ( 水 ) 改訂


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