伝承之蔵

九門長者 1
利府町/飯土井/長者

   昔、蝦夷征伐の時、 坂上田村麻呂 は、この里に布陣した。ある日、田村麻呂は、鷹狩りからの帰り道、この里にある 九門長者 の屋敷に立ち寄ったのだが、その長者の屋敷にいた多くの召し使いの中に、この世でもっとも醜い顔の女性がいた。その顔の醜さから、“ 悪玉 ”と呼ばれて、里人たちに軽蔑されていたのだが、田村麻呂だけは、この悪玉を見た瞬間、恋におちてしまい、長者に、「 私は、あの女性に恋をしてしまったようだ 」と言った。長者は驚き、「 あのような醜い顔の女でよろしいのですか? 」と尋ねると、田村麻呂は、「 なんということを! あのように美しい女性にむかって、無礼ではないか! 」と怒ったので、長者は、ただただ呆然とするのみであった。この悪玉は、もともと公卿の姫であり、才色兼備と評判で、求婚する者も数多かったのだが、悪い者たちに騙されて、この長者に売られてしまった。そこで、悪玉は、自分の身を守るため、守り本尊に、「 普通の人には、この世でもっとも醜い顔の女に見え、身分と教養のある人には、もとの姿に見えますように… 」と祈願したのであった。

   その後、田村麻呂は、たびたび長者の屋敷を訪れるようになり、悪玉に会うことを無上の喜びとしたのだが、とうとう、京の都に帰るときがきてしまった。田村麻呂は、悪玉に、鏑矢や短刀など、形見の品を与えて、華々しく京の都に凱旋した。このとき、悪玉は、田村麻呂の子供を妊娠していて、 延暦 十八年八月一日、無事、 千熊丸 を出産。やがて、千熊丸が十三歳になったとき、田村麻呂が悪玉に与えた鏑矢などを持って京の都に行き、めでたく、親子が対面したという。

参考 『 利府町誌 』
現地で採集した情報


現地レポート

これは、この伝承に関連している場所の全体図。



これは、近くにあった説明文。



これが、九門長者の屋敷跡。



これが、 伊豆佐比売神社 の鳥居。



これが、伊豆佐比売神社の本殿。昔、この神社の境内に、大きな欅の木があった。この欅の木は、悪玉と千熊丸が京の都に行く時、その記念として、悪玉が自ら植えたと伝承されている。


これが、悪玉が植えた欅の木。



残念ながら、火災で、このような姿になってしまった。出火原因は不明だという。この欅の木に関して、古老が、次のような話を教えてくれた。「 今から三十年前、この欅の木の上部が腐ってしまった時、某材木店が、この欅の木の一部分を、88万8888円で購入。そして、ある日、伐採業者が、荒々しく欅の木を伐って、金儲けのために持っていってしまった。しかし、それから、不思議なことが次々に起こる。残された欅の木の下部から、原因不明の出火があり、欅の木は全焼。その後、その欅の木の伐採にかかわった全員が死亡し、さらに、その某材木店は、詐欺にあったり、政治家の汚職事件に巻きこまれたりして、会社が大きく傾いてしまった 」と。


これは、火災になる前の欅の木。こんなに立派な木であった。この写真は、伊豆佐比売神社の本殿にあったもの。



平成 18 年 3 月 22 日 ( 水 ) 掲載
令和 5 年 8 月 14 日 ( 月 ) 改訂


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