伝承之蔵

裾をにぎったのは誰か?
利府町

   昔、ある夏の夜、この里の若者たちが、肝試しをしたことがあった。くじ引きで当たった者が、死んだばかりの婆さんの墓に行き、墓に向かって、「 こんばんは、こんばんは 」と言ってから帰って来るというものだったのだが、“ 行ったふり ”を防止するため、墓にある数枚の 卒塔婆 の中から一枚を抜いて、証拠として持ち帰らなければならないという決まりだった。くじ引きの結果、運の悪いことに、この里でも一番の臆病者の若者が当たってしまい、くじに当たった瞬間、その若者の顔色は真っ青になったのだが、臆病者だと言われるのが嫌だったのか、元気よく墓に向かって歩きだした。

   さんざん探しまわった後、やっとのことで、その若者は、婆さんの墓を発見し、小さな声で、「 こんばんは…、こんばんは… 」と言って、近くにあった卒塔婆を抜いたのだが、早く帰りたくて焦ってしまい、数本の卒塔婆を同時に抜いてしまった。そこで、余分な卒塔婆を元の場所にさしこみ、残った一枚の卒塔婆を大切に抱いて帰ろうとしたとき、何者かが、その若者の着ていた浴衣の裾をつかんだ。驚き恐れた若者は、すぐに逃げようとしたのだが、しっかりと裾をつかまれているので、逃げることができない。その若者は、「 うわぁ〜! 婆さんが、墓から手をのばして、おれの裾をつかんでるぅ〜! 」と叫ぶと、そのまま、その場に気絶してしまった。さんざん探しまわった後、やっとのことで、その若者は、婆さんの墓を発見し、小さな声で、「 こんばんは…、こんばんは… 」と言って、近くにあった卒塔婆を抜いたのだが、早く帰りたくて焦ってしまい、数本の卒塔婆を同時に抜いてしまった。そこで、余分な卒塔婆を元の場所にさしこみ、残った一枚の卒塔婆を大切に抱いて帰ろうとしたとき、何者かが、その若者の着ていた浴衣の裾をつかんだ。驚き恐れた若者は、すぐに逃げようとしたのだが、しっかりと裾をつかまれているので、逃げることができない。その若者は、「 うわぁ〜! 婆さんが、墓から手をのばして、おれの裾をつかんでるぅ〜! 」と叫ぶと、そのまま、その場に気絶してしまった。

   一方、その若者の帰りを待っている者たちは、その若者が、なかなか帰って来ないので心配になり、急いで墓に行ってみると、その若者が、婆さんの墓の前で、昏睡状態で倒れていた。後でわかったことなのだが、その若者は、余分な卒塔婆をさそうとしたとき、自分の浴衣の裾が卒塔婆にからんでいることに気づかず、卒塔婆で裾を貫いてしまっていたのであった。その後、この若者は、里人たちに、「 今夜、肝試しをやらないか? 」と誘われると、必ず、「 うるせえ! 」と激怒して断ったという。

参考 『 利府町誌 』
現地で採集した情報