伝承之蔵

圓城寺の住職と若者
利府町/利府/大町

   明治 時代、ある冬の夜、この里の若者たちが、五 〜 六人ほどで集まって相談し、「 圓城寺 の住職が、いくら禅で有名だといっても、いつも難しい顔ばかりしているのは気に入らない。ちょっと、驚かしてやろうじゃないか 」ということで話がまとまった。次の日の夜、若者の一人が、圓城寺の門前にある松の木に登って、住職が寒行にでかけるのを待ち、他の若者たちは、その様子を隠れて見ていた。そして、寒行のため、住職が寺から出てきて、門前の松の木の下で鈴を鳴らそうとしたとき、松の木の上から、若者が手をのばして住職の頭をつかんだのだが、住職は、何もなかったかのように鈴を鳴らしながら経を唱え、寒行を続けた。

   数日後、若者たちは、「 住職に、禅のことについて聞きたいことがあるのですが… 」と嘘をついて、圓城寺を訪ね、住職に、「 住職は、禅で有名ですが、今までに、何か不思議な経験をしたことがありますか? 」と聞くと、住職は、「 いや、別にないよ 」と、あっさり答えた。若者たちが、続けて、「 寒行のときに、何か不思議なことがありませんでしたか? 」と聞くと、住職が、「 それは、おまえたちの方が、詳しいのではないかな 」と答えたので、若者たちは、顔を見合わせながら、「 どうぞ、住職の話を聞かせてください 」と言った。すると、住職は、「 数日前の夜、寒行にでかけたとき、門前の松の木の上から手をのばして、私の頭をつかんだ者がいた。幽霊につかまれたのであれば、頭が冷えてくるはずなのに、その手は温かかったので、人間の手であることは、すぐにわかったよ。どうせ、里の若者たちの悪戯だろうと思って、さして気にもしなかった 」と言った。

   若者たちは、とっくに、自分たちの悪戯が住職にばれていたことを知り、汗を流しながら、住職に謝罪。すると、住職は、「 まぁ、気にするな。そんなつまらない話より、禅の話でもしてやろう 」と言って、長ぁ 〜 い時間をかけて、若者たちに禅の話をした。ただただ恐縮しながら禅の話を聞いた後、若者たちは、「 やれやれ、長い話だったな 」と思いながらも、「 やはり、住職は偉いな。禅の話を聞けたのも、まぁ、良かった 」と苦笑いをしながら、それぞれの家に帰っていったという。

参考 『 利府町誌 』
現地で採集した情報


現地レポート

これが、圓城寺の入口。



これが、圓城寺の本堂。



これは、歴代の上人の墓。



これは、歴代の上人が刻まれている碑。



歴代の上人が刻まれている碑によると、明治時代を生きたのは、二十五世の超道社良慈上人愁瑞和尚と二十六世の清道社良浄智親大和尚なので、この二人のどちらかが、この伝承の住職である。


平成 21 年 10 月 19 日 ( 月 ) 掲載
令和 5 年 8 月 16 日 ( 水 ) 改訂


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