ん〜、どんな話だったっけ… |
色麻町 |
|
昔、御釈迦様の弟子に、自分の名前も忘れてしまうほど物忘れが激しい、ダンドクという者がいた。その物忘れの名人であったダンドクが死んだ後、ダンドクの墓のまわりに 茗荷 が生えるようになったのだが、不思議なことに、その茗荷を食べた里人たちは、突然、激しい物忘れをするようになったので、里人たちは、「 あの茗荷を食べると、物忘れが激しくなるから、食べないほうがいい 」と噂するようになった。 ダンドクが死んでから二千数百年後、この里に、欲の深い婆さんが経営している宿屋があったのだが、ある日、ある里人から、「 人間は、茗荷を食べると物忘れが激しくなる 」という話を聞いた婆さんが、「 これは良いことを聞いた。茗荷の料理を客に食わせて部屋に忘れ物をさせ、そいつをいただくとしよう 」と計画していたところ、ちょうど、大金を持っている商人が婆さんの宿屋に泊まったので、婆さんは、「 待ってました!こいつに茗荷の料理を食べさせて、部屋に金を忘れさせよう 」と思い、たくさんの茗荷の料理を、その商人に出してもてなした。 数日後、仕事を終えた商人が、「 香りの良い茗荷を食べられて、本当に良かったです 」と婆さんに感謝して宿屋を去った後、婆さんは、「 やれやれ、やっと帰ったか。きっと、大金を忘れていったぞ! 」と叫び、胸をドキドキさせながら、その商人が泊まっていた部屋に急いだのだが、どんなに部屋の中を調べても、その部屋に忘れ物がなかったので、婆さんが、「 はて?そんなはずはないのだが… 」と思案していると、自分が、その商人に茗荷の料理を作っていたとき、茗荷の良い香りがしたので、ついつい味見をしながら料理をして物忘れが激しくなり、その商人から宿賃をもらうのを忘れていることに気づいた。 その商人が宿賃を払うのを忘れ、婆さんが宿賃をもらうのを忘れたことに気づいた婆さんは、その商人を慌てて追いかけ、旅人たちに、「 年齢が五十くらいで、目がクルッとした顔だちで、 縞模様 の風呂敷を背負った人を見ませんでしたか? 」と聞こうとしたのだが、茗荷を食べて言葉を忘れてしまった婆さんは、「 年がクルクル、目が五十、縞模様の人を背負った風呂敷を見ませんでしたか? 」と聞いてしまったため、ついに、その商人を見つけることができなかったという。
|