昔、この里に、
屁
をすることだけしか才能がない男が住んでいたのだが、その男のプップッという屁は、「 誰だ!誰だ! 」と聞こえるという評判だったので、ある長者の屋敷の蔵の番人として雇われることになった。その男は、寝ていても屁をすることができたので、蔵の中でも安心して仕事をサボって居眠りをしていたのだが、ある夜、盗賊が、財宝を盗もうとして蔵に侵入したとき、どこからともなく、「 誰だ!誰だ! 」という声が聞こえたので、驚き恐れた盗賊は、「 ん?人の声にしては、何だか変だな… 」と思いながらも、すぐに、逃げだした。しかし、「 やっぱり、何か変だ… 」と思った盗賊が、次の日の夜、その蔵に再び侵入したところ、同じように、「 誰だ!誰だ! 」という声が聞こえたので、よくよく声がする方向を見てみると、一人の男が居眠りをしながら屁をしているだけだということがわかった。そこで、「 この野郎ぅ! 」と思った盗賊は、その男の尻の穴に大根をつめて屁ができないようにしてから、ありったけの財宝を風呂敷に包んで蔵から出ようとしたのだが、誰かに背中をドンッと叩かれ、続けて、「 誰だ!誰だ!誰だ!誰だ!誰だ!誰だ!誰だ!誰だ! 」と叫ぶ声が聞こえたので、「 しまった!今度は本物だ! 」と思った盗賊は、盗んだ財宝を捨てて一目散に逃げだした。ところが、自分の尻の穴につめられた大根を屁で飛ばして盗賊の背中に当てたことも、たまりにたまっていた屁が一気に出たことも、自分の屁が長者の財宝を守ったことも、屁をしながら気持ち良く居眠りをしている男にとっては、まったく関係のない話であったという。
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