伝承之蔵

新町屋敷
亘理町/吉田/中原

   今から約二百年前、この里に、斎藤某という武士が住んでいた。その武士には、美しい娘がいたのだが、たいへん働き者で、里人たちにも親切だったので、みんなの憧れの的であった。ある日、その娘は、自分が池のほとりに佇んでいると、鳳凰が飛んできて近くの木の枝にとまり、じっとこちらを見ているという夢を見た。娘は、 「 まちがいない ! これは吉夢よ ! 」 と思い、そのことを誰にも話さず、自分の胸の中だけにとどめていた。

   翌日、娘が、ある池で洗濯をしていると、偶然、狩猟をしている殿様が通りかかって娘を見初め、娘を側室とした。娘は、長く誠実に殿様に仕えたので、殿様は、その褒美として、斎藤家に、城の近くの新町に新しい屋敷を与えた。その後、斎藤家が 新町 の屋敷に移り住んで、 中原 の屋敷が空き屋敷となったので、いつしか、里人たちは、この空き屋敷のことを、 “ 新町屋敷 ” と呼ぶようになったという。

参考 『 わたりの民話 』
現地で採集した情報


現地レポート

このあたりが、新町屋敷があった場所。現在は、畑になっている。



これが、この伝説の娘が洗濯をしていた池。昔は、もう少し広かったという。少し深い池であるが、これは、最近、掘ったためである。もともとは、現在よりも浅かった。


この伝説の新町屋敷の跡は、現在、 沼邊家 が所有している。沼邊家は、もともと岩手県の出身で、伊藤を名乗っていたのだが、殿様から、 「 おまえたちは、沼の近くに住んでいるので、これ以後、沼邊と名乗るがよい 」 と言われ、伊藤を沼邊に改めたという。


これは、沼邊家の家紋。



平成 24 年 12 月 8 日 ( 土 ) 掲載


地図