伝承之蔵

水神沼の葦の葉
山元町/坂元/新赤川

   昔、京の都から、鎮守府将軍の家来として同行し、 多賀城 に滞在していた青年がいた。その青年は、まるで浮世絵に描かれているような美男子だったのだが、その青年が、将軍とともに京の都へ帰る途中、この里に住んでいた豪農の屋敷に泊まった。その屋敷の夫婦は、そのような高貴な方たちを泊めたことがなかったので、宴席でのお酌などを誰にさせようかと考えていたところ、その夫婦の一人娘が、「 私がいたしましょう 」と申し出た。そして、娘が宴席で、しずしずと歩いて青年の脇にぴったりと座ると、その優美な男女の姿に拍手がわき、いっそう宴席は華やいだものとなった。二人は、酔いをさますために、近くにあった 水神沼 のほとりを散歩し、そのまま夜中まで語り続け、明日、別れなければならない、自分たちの運命を恨んだ。その青年が、将軍とともに京の都に向けて出発した後、娘が、たくさんあった縁談をすべて断り、水神沼のほとりに行っては、「 上方 恋し…、上方 恋し… 」と言って泣いていたので、里人たちは、「 そのせいで、水神沼の葦の葉は、上方の方ばかり向いているんだ 」と、噂したという。

参考 『 山元町誌 第二巻 』
現地で採集した情報


現地レポート

これが、水神沼。



この伝承を知っているためか、どこか悲しみを誘う風景である。



平成 17 年 10 月 6 日 ( 木 ) 掲載
令和 5 年 9 月 9 日 ( 土 ) 改訂


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