伝承之蔵

小平の天狗
山元町/小平

   今から二百年ほど前、この里に、 七太夫 という男が住んでいた。七太夫は、たいへん真面目な人間で、朝は早くから起きて冷水で身を清め、天地神明に祈りを捧げるという規則正しい生活を送っていた。ある日、七太夫は、家族に、「 仙台に用事があるので行ってくる 」と言って外出したのだが、一時間半くらいで屋敷に帰って来たので、家族が、「 あれ? 仙台には行かなかったの? 」と聞いたところ、七太夫は、「 もう、仙台に行って用事を済ませてきた 」と答えた。この話を聞いた里人たちが、その仙台の用事先に、「 七太夫が、ここに来たというのは本当か? 」と聞いてみると、「 あぁ、確かに来たよ 」と答えたので、「 背中に羽でもついていて、仙台まで飛んで行ったのだろう 」という噂になり、その後、里人たちは、七太夫を天狗だと信じて疑わなかったという。

参考 『 山元町誌 第二巻 』
現地で採集した情報


現地レポート

この里から仙台までは、片道30kmなので、往復で60kmである。この距離を一時間半で歩くのは難しいので、「 七太夫は、それほど身軽だった 」という主旨の話であろう。


山元町誌 第二巻に、「 現にこの人の墓碑には、『 天狗 』の姿があざやかに刻まれております 」という記述があったので、この記述の内容を確認するため、七太夫の墓を探してみることにした。山元町誌 第二巻によると、七太夫は、佐藤彰さんの祖先とのことなので、この佐藤家を探したのだが、佐藤彰という名前を知っている方はいなかった。そこで、この里にある寺を探すことにしたところ、この里には、 鳳仙寺 と殊善寺という二つの寺があることが分かった。殊善寺は無住の寺だったので、鳳仙寺の住職に、この伝承に関して聞いたところ、「 ん〜、聞いたことがあるような、ないような… 」という答えであった。そこで、鳳仙寺と殊善寺にある墓を全て確認したのだが、天狗の姿が刻まれている墓はなかった。古老の話によると、「 小平に住んでいる佐藤家は、すべて鳳仙寺に墓がある。ただし、仙台に引っ越した者も多く、その方の墓まではわからない 」とのことであった。さらに、別の古老は、「 それは、佐藤家ではなくて、大橋家のことだ 」と証言している。七太夫の墓が発見できれば、はっきりとしたことが分かるのだが、今の段階では、この伝承を聞いた里人たちが、勝手に、「 ○○家の先祖に… 」という部分を加えて伝承された可能性も残されている。


平成 18 年 12 月 15 日 ( 木 ) 掲載
令和 5 年 9 月 10 日 ( 日 ) 改訂