伝承之蔵

平筒沼の大蛇 2
登米市/米山町/桜岡貝待井

   昔、この里にある 平筒沼 の中の小島に、どこからともなくきた僧が庵を結び、この僧が溺愛する一匹の赤い蛇とともに住んでいた。この僧は、その小島に自生している シキミ から葉をつみとり、一葉に一字ずつ、「大弁財天女功徳尊勝陀羅尼」という経を書いて、それを本尊とした庵を 金華山金密寺 と称していた。

   ところが、ある激しい風雨の夜、この僧が死んでしまったため、四〜五人の里人たちが、この僧の通夜に集まっていたのだが、真夜中になって、「死んだ僧にゆかりのある者です」と話す女性が訪ねてきた。里人たちは、「こんな時間に…、どことなく怪しい女性だな…」とは思いながらも、その女性を庵の中に入れたところ、その女性が、この僧の遺体に焼香した瞬間、突然、突風が吹いて灯が消え、庵の中が暗闇になった。すると、その暗闇の中で、たちまち、その女性が赤い大蛇に変身し、その僧の遺体を口にくわえたまま平筒沼の底に沈んでいった。

   やがて、その恐怖の夜が終わって空が白みがかったころ、沼の底から竜巻が舞い上がり、その竜巻の中にいた二匹の紅白の龍が、 蓮灯 とともに昇天する姿が見えたという。

現地で採集した情報


現地レポート

上の写真は、平筒沼。この伝説の龍の御加護なのであろうか、この里が、いかなる干ばつに襲われても、この沼の水が涸れることはなかったという。


これは、平筒沼にある小島。



これは、弁財天の鳥居。



これが、弁財天。



これは、平筒沼弁財天縁起の説明板。文字が不明瞭で読めないと思うので、以下に記述する。「平筒沼の東端に通称『弁天島』と呼ぶ一小島がある。いつの時代かは知るよしもないが、この島にどこからともなく来た一人の僧が住みつき庵を結んでいた。僧は島に自生しているシキミの老木より葉をつみとって一葉に一字ずつ『大弁財天女功徳尊勝陀羅尼』というお経を書き、それを本尊として庵を金華山金密寺と称した。不思議なことにこの僧は常に一匹の赤色をした小蛇をかた時もはなさず、実に母が我が子を愛するが如く可愛がっていた。ある風雨のすざましい【原文ママ】夜にこの僧は死んだ。山深い湖畔の庵には常には訪れる人も稀であったが僧の死を知って御通夜に四、五人の人達が集っていた。夜もかなり更けた頃、死んだ僧のゆかりのものであると名乗って一人の婦人が訪れて来た。通夜の人々はいぶかしく思ったが婦人を内に招じ入れた。改まった佛間とてない一間の庵だったので、みんなの前で婦人は僧の遺体に焼香すると見るまに、俄かに一陣の風で灯が消えて、暗やみになった。暗黒の中で、この婦人の姿は忽ち赤色の大蛇となった。そして僧の遺体を口にくわえて狂乱怒涛の平筒沼に身を投じたのである。やがて悪夢の様な恐怖の一夜もおさまり東の空が白みかかった頃、沼の中ごろとおぼしいところから一条の竜巻が舞い上り、その中に赤白二匹の竜が蓮灯(蓮の花のかざりのついた灯篭)を捧げて昇天してゆくすがたが見えたという。それ以来いかなる干魃にもこの平筒沼の水はかれたことがないという」。


平成 17 年 7 月 31 日 ( 日 ) 掲載
令和 8 年 2 月 28 日 ( 土 ) 改訂


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