伝承之蔵

関の大杉 2
七ヶ宿町/大杉

   昔、お杉という女性が、この里に住んでいたのだが、お杉が、お伊勢参りをしたとき、帰りの 路銀 を盗まれてしまい、たいへん困ったことがあった。そのとき、伊勢神宮の別当である某が、袋に二貫文を入れて、お杉に貸してあげたのだが、お杉が、なかなか金を返さないので、その別当が、この里の 肝入り に、 「そちらの里に、お杉という女性が住んでいると思いますが… 」と、手紙に事情を書いて送ったのだが、その手紙を受け取った肝入りは、「 お杉?そんな名前の女性は、知らないなぁ… 」と首をかしげ、どのような返事を別当にすればよいのか困ってしまった。ところが、その数日後、この里にある大きな杉の木の梢に、何か光るものがあったので、肝入りが近づいて見てみると、梢に袋がかかっており、その袋の中には二貫文が入っていた。この話を聞いた里人たちは、「 あの大きな杉の木が女性に化けて、お伊勢参りに行ったのでは? 」と噂したのだが、この噂を聞いた他の里の者たちが、「 おまえたちの里には、そんな尊い杉の木があるのか! 」と言って、次々と、その杉に参詣するようになったという。

参考 『 七ヶ宿町史 生活編 』
現地で採集した情報


現地レポート

この伝承の大きな杉の木は、 関泉寺 の境内にあり、里人たちからは、“ の大杉 ”と呼ばれている。上の写真は、関泉寺の山門。



これは、関泉寺の本堂。



これは、近くにあった説明文。



赤丸が、関の大杉。



これが、関の大杉。この杉は、 大正 六年八月十一日の落雷で、木の中程から折れてしまった。古老の話によると、「 関の大杉は、落雷のために何度も枯れてしまいました。はて? 今のは何代目だっけ? 」とのこと。


これは、関の大杉の説明文。



これは、関の大杉の梢。残念ながら、二貫文が入っている袋はなかった。



二貫文が、現在の価値にしてどのくらいなのかが気になったので、『 お江戸の意外な「 モノ 」の値段 』を参考にして調べてみた。屋台の蕎麦に関して、「 明和・安永年間( 一七六四〜八〇 )以降は十六文に定着した 」との記述があるので、蕎麦をもとにして一文の価値を計算してみると、現在、かけそばの値段は270円くらいなので、270円=十六文となり、一文は、約17円となる。よって、千文は、約17000円となり、一貫=千文であるから、二貫文は、約34000円となる。朝・昼・晩の食事を全て蕎麦にすると、約42日間も生活できるということである。


平成 19 年 5 月 8 日 ( 火 ) 掲載
令和 5 年 10 月 17 日 ( 火 ) 改訂


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