首なし田

   昔、ある 長者 が、里で一番の田植え上手に、田植えを依頼した。

   依頼された女性は、長者の広い田の田植えを、たった独りでしていた。 すると、田の近くに寝かせていた赤ん坊が、目を覚まして泣きだした。 そのため、この母親は、赤ん坊を背負って、田植えを続けた。 しばらくすると、赤ん坊が、突然、泣きやんだ。 母親は、眠ったのだと思い、さらに田植えを続けた。

   母親は、赤ん坊を背負っていることを忘れるほど、夢中になって、田植えをしていた。 夕方、田植えが終わったので、お乳を赤ん坊に飲ませようとした。 しかし、母親が、赤ん坊を背中からおろすと、赤ん坊の首がなくなっていた。

   母親は、泣きながら、必死に、赤ん坊の首を捜したが、とうとう発見できなかった。 それ以後、この田には、稲が実らなくなったという。

参考『 大島誌 』

独自に、現地で採集した証言



“ 首なし田 ” 写真館

これが、 首なし田 。現在は、資材置き場のようになっている。この田の西側が一杯森で、北側が長浜。 この赤ん坊に、お供えした一杯の飯が、みるみる大きくなったという。 そして、それが一杯森になった。 確かに、一杯森は、お椀をひっくりかえしたような形をしている。
平成17年10月18日(火)掲載