葡萄の松・如来の松

   応永 年間、漁師が漁をしていると、大きな亀が網にかかった。 不思議なことに、その亀の背中には、 薬師如来 像がのっていた。恐ろしくなった漁師は、大島の領主であった菊田義演に、このことを届け出た。

   義演は、「 これは、数年前、私が 比叡山 延暦寺 から 拝受 した薬師如来像だ。大島へ帰る途中、『 縁があったら、 陸奥 の大島まで来てください 』と念じて、琵琶湖の底に沈めた。それが、今、私を訪ねて来たのだ 」と言った。 そして、薬師堂を建てて、祀った。

   薬師如来像をのせてきた亀は、すぐに死んでしまった。 義演は、この亀を手厚く葬り、近くに二本の松を植えたという。 いつしか、 里人 たちは、その松を、“ 葡萄 の松”とも“如来の松”とも呼ぶようになった。

参考『 大島誌 』

現地で採集した情報



“ 葡萄の松・如来の松 ” 写真館

たいへん、見にくい場所にある。赤丸が、ヤマヨかき処理場。 この急な斜面を少しおりると、右側の方に、松が見えてくる。 ただし、蛇に注意!
これが、“ 葡萄の松 ”とも“ 如来の松 ”とも呼ばれている松。現在は、この一本しかない。数年前に、 松食虫 にやられたという。
亀を葬った場所の近くに、森がある。その森を、“ 亀が森 ”( 現在の小亀山の北部 )という。 里人たちは、“ 後けた ”と呼んでいる。
里人たちは、対岸の浜を、亀が森に対して、“ 鶴ヶ浦 ”と呼んでいる。
これが、薬師如来を安置している薬師神社。

これが、本殿の中。

平成17年10月24日(月)掲載