名木沢の紋兵衛 1

   宝暦 年間、 名木沢紋兵衛 という 狩人 がいた。

   ある日、紋兵衛が、 君ヶ鼻山 で狩をしていると、突然、大蛇が襲ってきた。紋兵衛が、 無我夢中 で鉄砲を撃つと、大蛇の左眼に弾があたった。 すると突然、雷とともに激しい雨が降りだし、大蛇は森の中に姿を消した。

   この大蛇は、いつの日にか、紋兵衛に復讐しようと思い、名木沢川を泳いで下った。 さらに、海を泳いで大島に渡り、亀山の にある 葡萄沢 に棲みついた。大蛇は、女性に化けて、気仙沼の 市日 には、必ず顔をだした。そして、こう尋ねてまわった。「 紋兵衛という方を、ご存知ですか?」


   それを知った紋兵衛は、大蛇の復讐を恐れて、 御崎神社 への 参詣 をしなくなった。また、紋兵衛の子孫も、御崎神社へは参詣しなかったという。

参考『 大島誌 』

現地で採集した情報



“ 名木沢の紋兵衛 1 ” 写真館

これが、紋兵衛の供養碑。 平成三年十月十二日の台風二十一号により、この供養碑が、 下の道路に転落したという。
一部を除いて、すべて紋兵衛関係の石碑。しかし、詳細は不明だという。
これが、紋兵衛の屋敷跡。現在は、 椎茸 を栽培している。

これが、大島にある葡萄沢。赤丸のあたりに大蛇が棲んでいた。 伝承では、「大蛇が棲んでいる部分には、草木が生えない」 となっている。 事実、現在でも草木が生えていない。 上記の写真では見えないが、対岸からだと、はっきりと見える。 古老の話では、「昔、誰かが調査したことがあった。 何かの油が、地中からしみだしているらしい」と言っていた。
これが、御崎神社。大蛇関係の、お堂らしきものは見られなかった。 伝承のみで、最初から存在しなかった可能性がある。 または、最初は存在したが、現存していないのかもしれない。
平成17年11月22日(火)掲載