万吉ころばし

   昔、 万吉 という男がいた。ある夜、酔っている万吉を見た は、 悪戯 をしてやろうと思った。そして、 里人 に化けて、万吉を道に迷わせる。万吉は、 明け方 、ふらふらになって家に帰った。

   また、ある夜、万吉が 縁日 に行く途中、先日の狐が里人に化けて、また、万吉に悪戯をしようとしていた。

   今度は万吉も気づいたが、だまされたふりをして縁日に行った。万吉は、里人に化けた狐を誘って、 ある茶屋へ入り、どんどん酒を注文して、明け方まで酒を飲み続けた。そして、 里人に化けた狐は、そのまま眠ってしまった。

   万吉は、茶屋の主人に、「 お 勘定 は、この男が支払うことになっているから 」と言って、店を出た。しばらくして、茶屋の主人が、その男を見ると、大きな 尻尾 をした狐になっていた。茶屋の人々は驚いて、全員で狐を取り囲み、手で、 殴る 殴る殴る。足で、 蹴る 蹴る蹴る。棒で、 叩く 叩く叩く。茶屋は、大騒ぎとなった。

   ある日、いつものように、万吉が酔って歩いていると、その狐が現われて、万吉を から突き落とした。そして、そこにあった岩に頭をぶつけて、死んでしまった。それ以後、その沢を、 “ 万吉ころばし ”と呼ぶようになったという。

参考『 大島誌 』

現地で採集した情報



“ 万吉ころばし ” 写真館

これが、万吉ころばし。

この沢を進むと、万吉が住んでいたという 善知鳥屋敷 があるらしい。現在は、 石垣 が残っているだけだという。
万吉ころばしの場所がわからなかったので、里人に教えてもらった。そして、万吉ころばしの撮影を終えて、 次の目的地に移動した。その途中、車から、白い狐が見えたような気がした。「 白か…、 珍しいなぁ〜 」と思いながらも、次の目的地に到着。そこで、古老の話を聞いているうちに、 撮影した万吉ころばしの場所が、誤っていることが判明。さっそく、正しい場所に行ってみると、さっき、 白い狐を見た場所であった。なんとも上手く言えないが、不思議…。
平成18年1月24日(火)掲載