猫の恩返し

   明治 三年、 青龍寺 に、保田孝道という住職がいた。その住職は、飼っていた猫を、自分の子供のように愛していた。 ある日、年老いた住職は病気になり、とうとう動けなくなった。 青龍寺は、貧しい寺だったので、食べるものも十分ではなく、住職の病気は、悪化していくばかりであった。

   しかし、ある朝、住職が 目覚める と、 枕元 に、 の卵が五個ほど置いてあった。次の日の朝には、十個も置いてあった。 住職は、「 不思議なこともあるものだ… 」と思い、夕方まで、ずっと、十個の卵を見つめていた。

   するとそこに、 門前割烹 、“ 扇屋 ”の主人が 見舞い にきた。そこで、住職が、卵の件を話すと、扇屋の主人は、その卵を見て、ひとりで 頷いた 。そして、「 実は、料理場に置いてある卵が、毎晩、なくなっているんです。 この卵に残っている傷を、見てください。これは、猫の歯でついた傷です。あなたが飼っている猫が、 あなたに、卵を食べさせようと思って、運んだんですね 」と言った。

   その話を聞いた住職は、「 私の愛が、 畜生 類にまで及んだとは… 」と 号泣 した。その後、住職は、病気のため、死んでしまった。 すると不思議なことに、いつの間にか、その猫も姿を消したという。
参考『 気仙沼町誌 』

現地で採集した情報



“ 猫の恩返し ” 写真館

これが、青龍寺の入口。

これが、青龍寺。ビルのように見えますが、お寺です。

これが、青龍寺の本堂。この伝承は、明治三年にあった実話です。
これが、扇屋。創業百二十余年。うなぎ料理の店です。

これが、扇屋の入口。

これは、扇屋の看板。歴史を感じます。

平成18年6月24日(土)掲載