気仙沼の船幽霊 2

   ある夜、ある をとる船が沖で 停泊 していたとき、大勢の人が乗った怪しげな船が近づいてきて、「 そちらの船に乗せてくれ…。乗せてくれ… 」と言いながら、次々と乗りこんできた。

   船幽霊 と判断した乗組員たちは、乗りこんでくる者たちを 逮捕 して船内の部屋に 監禁 した。そして、翌朝、恐る恐る部屋の中を 覗いて みると、全員が 海月 に変っていたという。

参考『 気仙沼市史 Z 民俗・宗教編 』

現地で採集した情報



“ 気仙沼の船幽霊 2 ” 写真館

これは、気仙沼で乗ったフェリーからの風景。

この伝承の“ 船内の部屋 ”に関してであるが、気仙沼市史 Z 民俗・宗教編には、“ ナマ ”と記述されていた。ウェブサイト「 気仙沼みなと百科 <UMIDAS> 」では、ナマを、「 和船の中の一角。御船霊様が祭られている帆柱の後ろの部分で、水死体などを上げる場所のこと 」だとしている。

昔、 気仙沼 には、水死者を引きあげるとき、 遺体面舵 からあげて、 船霊不浄 なものを見せないように、ナマに 安置 するという 作法 があったらしい。そのため、この伝承では、船に次々と乗りこんでくる船幽霊をナマに 監禁 したのである。

翌朝、全員が海月になっていたことに関してであるが、これにも理由がある。昔、気仙沼では、海に浮かんでいる海月の姿が 河童 の頭に似ていることから、海月を嫌っていたという。また、風に逆らって進む船幽霊と、潮の流れとともに移動し、時には風に逆らって流れることもある海月を結びつけた可能性があると思われる。
平成20年3月14日(金)掲載