山田子安地蔵尊の由来

   昔、 文覚上人 が、ある里の浜に上陸したとき、海の中に 地蔵 が沈んでいるのを発見した。文覚上人は、「 何という 無礼 なことを、すぐに 拾わな ければ! 」と思い、その地蔵を拾って、その里に 祀った のだが、その後、 妊娠 していた女性が 流産 したり、子供たちが突然死するなど、悪いことが続いたので、文覚上人と 里人 たちは、再び、地蔵を海に流すことにした。

   里人たちが、地蔵を海に流しに行く途中、 偶然 の里に住んでいる 長者 に会った。その長者は、「 へぇ〜、そうなんですか…。しかし、お地蔵様を海に流すのは、ちょっと… 」と思い、里人たちから地蔵をもらって、自分の里に地蔵堂を建てて、 丁寧 に祀った。しかし、長者が、丁寧に地蔵を祀ったにもかかわらず、この里の女性たちが妊娠しなくなるなど、この里にも同じような悪いことがおこるようになった。

   ある年、長者の屋敷の者たちが、“ ボー ”という病気にかかり、長者を除く全員が 寝込んで しまった。しかたなく、長者が一人で田に 代掻き に行くと、すでに、 立派 に代掻きされていた。

   不思議に思った長者が、田の近くにあった 足跡 をたどると、地蔵堂まで続いていた。その話を里人たちにしたところ、「 実は…、早朝、長者の田で、見たこともない大男が、 イブリ で代掻きをしているのを見ました 」と、 証言 する里人が現われた。

   その夜、長者の 夢枕 に、その地蔵が現われ、「 よく聞け。今後、田の代掻きに、イブリを使ってはならぬ! 」と、 お告げ をした。長者が、お告げのとおりにすると、不思議なことに、この里の女性が妊娠するようになり、隣の里からも、流産や子供たちの突然死がなくなったという。

参考『 本吉町誌U 』

現地で採集した情報



“ 山田子安地蔵尊の由来 ” 写真館

これが、この伝承の地蔵を祀っている 山田子安地蔵尊 の入口。
これが、“ こだからばし ”。

階段をのぼると、地蔵堂がある。

これが、地蔵堂。

これは、地蔵堂の内部。

平成22年9月23日(木)掲載