女殺しの堤 |
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昔、この里に、“ 作兵衛 ”という者が住んでいた。作兵衛と、その妻の“ お文 ”は、この里で一番の働き者であり、みんなが 羨む ほど仲の良い夫婦であった。ところが、ある日、突然、お文が 行方不明 になった。作兵衛と 里人 たちは、お文の 無事 を願いながら、必死になって行方を 捜した のだが、残念ながら、七日後、ある 堤 で水死体となって発見された。 その数日後、作兵衛が 縁側 に座って 呆然 としていると、突然、死んだはずの、お文が姿を現わした。そして、どうして自分が死んだのかを作兵衛に話しはじめた。「 私が堤の近くを通ったとき、水面にキラキラと輝く黄金の 杯 が浮いていました。私は、『 あなたが、この杯で酒を飲んだら、どんなに喜ぶだろう 』と思い、その杯を取ろうとして水に入りました。しかし、私が近づこうとすると、その杯は、少しずつ私から離れていきます。 無我夢中 になって杯を追っていると、堤の主が現われて… 」と話したところで、お文は、突然、何かに 脅え だし、音もなく姿を消してしまった。作兵衛は、「 あっ、お文! お文! 待ってくれ! お文〜! 」と叫んだのだが、二度と姿を現わすことはなかった。 その後、作兵衛は、仕事もしなくなり、誰とも話さなくなった。そして、雨の日も風の日も、ずっと堤の水面を見つめ続けたのだが、ある日、手と足をブルブルと 震わせ ながら、「 お文を返せ! 」と叫びはじめた。作兵衛は泣きながら、「 お文を返せ! お文を返せ! お文を返せ! お文を… 」と叫び続けた。しかし、しばらくすると 気絶 し、そのまま死んでしまった。いつしか、里人たちは、お文の命を奪った、その堤を、“ 女殺しの堤 ”と呼ぶようになったという。 参考『 鹿島台町史 』
現地で採集した情報
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