鈴振り長者

   昔、この里に、心の優しい 長者 が住んでいた。当時、この里の近くには、多くの 盗賊 がいたので、ある日、その長者は、 家来里人 たちを集めて 宴会催し 、「 もし、盗賊たちが、この屋敷を襲ってきたら、この“ 銀の鈴 ”を鳴らすから、そのときは、この屋敷にある金銀財宝を、みんなで守ってくれ 」と頼んだ。

   ある嵐の夜、長者は、「 こんな日は、盗賊たちも襲っては来ないだろう 」と言って、 当直 の家来たちまで眠らせてしまった。すると真夜中になって、激しい 雷雨 の中、突然、玄関の戸が 破壊 され、盗賊たちが襲ってきた。驚き恐れた長者は、 必死 に銀の鈴を鳴らしたのだが、すでに、盗賊たちが屋敷の金銀財宝を 略奪 した後だった。

   翌朝、多くの里人たちが長者の屋敷を訪れたのだが、たいそう悲しんでいる長者を見るのがつらいのか、一人、また一人と屋敷を去っていき、とうとう誰もいなくなってしまった。その後、あれほど 隆盛極めた 長者の屋敷も、 廃墟 になってしまったという。

参考『 鹿島台町史 』

現地で採集した情報



“ 鈴振り長者 ” 写真館

この伝承の 原題 は、“ 鈴振り殿様 ”であり、この里の“ 陣が森 ”という場所にあった殿様の館での話である。 この伝承の陣が森を探したのだが、残念ながら、発見することができなかった。現在、調査中です。また、鹿島台町史には、「 何年か 経って 松島の裏山の 洞窟坐禅 を組む禅僧が殿様の姿に生きうつしであったといううわさが流れたこともあったが、 古老 の中には、殿様をなつかしむ人たちの見た他人の 空似 だと打ち消す人もあった 」とある。
平成20年5月29日(木)掲載