三本木の狐 |
|
昔、この里に、 頻繁 に人間を 騙す 狐 が 棲んで いて、 里人 たちを困らせていた。そこで、ある日、ある若者が、「 よ〜し、おれが、その狐をつかまえてやる! 」と言って、森の中で狐が姿を現わすのを待っていた。 すると、ちょうど、若者の近くに、一匹の狐が姿を現わした。その狐は、突然、ガサッと 藪 の中に飛び込むと、一羽の 雉 をくわえてきて、その雉を 赤ん坊 に 化けさせた 。そして、その狐も、ヒョロリと 宙返り をしたかと思うと、美しい娘に化けた。 若者が、赤ん坊を 背負って スタスタと歩きはじめた娘を 尾行 すると、その娘は、「 お父さん、お母さん、ただいまぁ〜 」と叫びながら、ある屋敷に入っていった。屋敷では、ひさしぶりに娘が孫を連れてきたので、たいそう喜んだ。 若者は、「 これはまずい。完全に騙されている! 」と思ったので、すぐに、ズカズカと屋敷の中に入り、「 騙されるな! あいつは狐だ! おれは森の中で、あいつが化けるのを見たんだ! 」と叫んだ。 ところが、娘の両親は、「 ハハハ! とんでもないことを言う方じゃ。あれは、私たちの娘に 相違 ないですよ 」と言って笑った。 すると、若者は、「 どんなに 上手に 化けても、杉の葉で 燻せば 、狐は 尻尾 を出すものだ! 」と叫び、泣き叫ぶ娘と赤ん坊をおさえつけて燻したのだが、尻尾を出さないばかりか、おさえつけられたショックで二人とも死んでしまった。両親は 激怒 し、「 私たちの大切な娘と孫が死んでしまったではないか! どうしてくれるんだ! 」と、若者を 責め たてた。 すると、若者はニッコリと笑って、「 古い狐は、たとえ死んでも、簡単に尻尾を出したりはしません。しかし、どんな狐でも、朝日に照らされると、その 正体 を現わすものです 」と言った。ところが、夜が明けて朝日が照りつけても、二人の 遺体 に変化はなかった。さすがの若者も、これには青ざめて、「 なんとも、たいへんなことをしてしまった。これは、私の重大なミスだ。ご両親の好きなように罰してください 」と言って、目をつぶった。 娘の両親は、「 今さら、おまえを殺してもしょうがない。せめて 坊主 になって、おまえが殺した二人の 霊 を 弔え 」と言って、若者の 髪 を 剃り落とした 。若者は、少し 奇妙な 痛みを感じながらも、ついに、 逆らう こともなく、坊主にされてしまった。そして、坊主にされた若者は、 南無阿弥陀仏 を 唱え ながら 鐘 をたたき、 一心不乱 に二人の霊を弔いはじめた。 一方、里人たちは、三日も帰ってこない若者を心配して、あちらこちらを 捜しまわって いた。しばらくして、大きな岩の上に座り、木の 棒 で岩を 叩き ながら、「 ナンマイダ、ナンマイダ 」と唱えている若者を発見。里人たちが、岩の近くまで行って若者を見てみると、髪の毛が、むしり抜かれているため、頭は血だらけになっていた。そのときの若者の 様子 は、まるで 夢遊病者 のようであったという。 参考『 三本木町誌 下巻 』
現地で採集した情報
平成23年7月15日(金)掲載
|