薬師如来と御坊先生

   昔、この里に、“ 御坊先生 ”という 棲んで いた。この御坊先生は、いつも、 念南寺薬師如来 様に 御馳走 していただいていたのだが、御坊先生は、なんとかして、この御馳走の 御礼 をしたいと思っていた。ところが、御礼をしたくても、御坊先生は、たいそう 貧乏 だったので、御礼ができなかった。

   ある日、御坊先生は、「 御礼をすることはできないが、 感謝 の気持ちだけは伝えたい。そうだ! 薬師如来様を御馳走に 招待 して、 仮病 をつかって、すぐに帰ってもらおう 」と思って、計画どおり薬師如来様を御馳走に招待した。後日、薬師如来様が御坊先生を訪ねると、御坊先生は 慌てて 仮病をつかい、薬師如来様への対応をしなかったので、薬師如来様は、 不愉快 に思って帰ってしまった。御坊先生は、「 しめしめ、 上手く いったぞ。しかし、このまま怒らせておくのはまずいな 」と思い、翌日、病気が 治癒 したふりをして薬師如来様を訪ね、「 いゃ〜、昨日は、たいへん 無礼 なことをいたしました 」と言って 謝罪 した。

   薬師如来様は、「 さては、御馳走したくないので、仮病をつかったな。少し 懲らしめて やるか 」と思い、「 それはそれは、たいへんだったな。ところで、おまえに な話がある。ある池にいる魚を、たくさんとれる方法を教えてやる。なぁに、簡単なことだ。ちょっと寒いが、一晩中、おまえの 尻尾 を、あの池の中に 垂らして おくと、たくさんの魚がとれるぞ 」と言った。

   御坊先生は、「 そんな簡単な方法で魚がとれるのか 」と、たいそう喜んだ。そして、夜になるのを待って、その池に行き、冷たい水の中に尻尾を入れて、「 大漁 、大漁 」と 呟きながら 、じっと 我慢 していた。そのうち、 の鳴く声が聞こえてきたので、「 あぁ、朝か、そろそろ、尻尾を引き上げてみるか 」と思い、そっと、尻尾を引いてみたのだが、まったく動かなかった。 「 これは、魚がとれすぎて動かないのかな? 」と思って、尻尾を見てみると、尻尾が完全に 凍り付いて いた。驚いた御坊先生は、「 薬師如来様〜!、薬師如来様〜! 」と叫んで、助けを求めたのだが、薬師如来様は姿を見せなかった。
   そのころ、薬師如来様は、ある 信仰心 のある 里人 に、「 すまないが、早朝、ある池に行って、御坊先生という狐を助けてやってくれないか 」と 依頼 していた。約束どおり、その里人が池に来てみると、何やら叫び声が聞こえる。そこで、その場所に行ってみたところ、尻尾が凍りついて困っている御坊先生がいた。里人が、近くにあった で氷をわって助けると、御坊先生は、その里人に何度も御礼を言ってから立ち去った。その後、御坊先生は、薬師如来様に御 詫び をして許してもらい、また、里人たちを 騙して 困らせるようなこともしなくなったという。

参考『 三本木町誌 下巻 』

現地で採集した情報

平成23年8月23日(火)掲載