伝承

人身御供になった浪人
大崎市/三本木坂本

   昔、この里で、突然、たくさんの子供たちが悪い病気になったり、 変死 したりしたことがあった。そのため、 里人 たちが、 占い師占って もらったところ、 「 三面観音 様が、悪い病気を流行させている。これを防ぐには、まず、生きている人間を 御供え して、三面観音様の御許しをいただくことが必要だ 」 という結果がでた。そこで、里人たちは、 人身御供 をすることを決め、生きている人間を 棺桶 の中に入れて、三面観音様に 奉納 した。ところが、人身御供を何回しても、まったく効果がなく、とうとう人身御供にする人間もいなくなったので、里人たちは困り果ててしまった。

   ちょうど、そのとき、ある 浪人 が、ひょっこり、この里にやって来た。その明るく元気な中年の浪人は、困り果てている里人たちから、その話を聞くと、 「 ほ〜、そいつは 面白い  」 と言って、 自ら 進んで人身御供になることを申し出た。その日の夜、準備ができたので、里人たちは、浪人を棺桶に入れて、三面観音様の 御堂 の裏まで運ぶと、棺桶に一礼して、その場を去った。そのころ、浪人は、棺桶の中で、 「 さてさて、この後、何がおこるのか楽しみだな。まぁ、考えても 仕方がない 。しばらく待ってみるか 」 と思い、何かがおこるのを待った。

   しばらくすると、突然、たくさんの が棺桶を 囲んで 、 「 われわれは、この御堂の裏の サイカチ の木の穴に 棲んでいる 鼠の一族である。この度、御供えになられた方は、 神妙 に食われるがよい 」 と叫んだ。そして、すぐに、鼠の一族は、 四方八方 から棺桶を食い破りはじめたのだが、その中でも動作の 素早い 鼠は、すでに浪人の足の指を食べはじめていた。浪人は、 「 これはヤバイ ! このままでは、鼠たちの食料になっちまう ! 」 と思い、とっさに猫の鳴き声を 真似 して、 「 ニャーゴ ! ニャーゴ ! 」 と鳴いた。すると、鼠は驚いて、 「 おい、ヤバイぞ ! この棺桶の中には、猫が 隠れて いる ! 逃げろ ! 」 と叫んで、 一目散 に逃げ出した。

   翌朝、里人たちは、 「 あの浪人さんを御供えして、三面観音様は喜んでくれただろうか ? 」 と思い、御堂の裏まで 様子 を見に来た。そして、棺桶の をとって、そっと、中を 覗いて みると、浪人が、 「 やぁ、ひさしぶり ! 」 と言って、ニッコリと笑った。里人たちは、 「 浪人の 幽霊 が出た〜 ! 」 と叫んで、逃げ出したのだが、浪人は、里人たちを呼びもどし、 「 悪い神様の 正体 がわかったから、そんなに心配しなくてもいい 」 と言って、里人たちに事情を説明した。

   事実を知った里人たちは、鼠の一族を 退治 しようとして、御堂の裏の太いサイカチの木の穴の入口で火を燃やし、その で鼠を追い出してから、数千匹の鼠を全滅させた。鼠を全滅させた後、ふと、あたりを見わたすと、人身御供になったと思われる里人たちの 白骨 が、 折り重なる ようになって 捨てられて いた。

   その後は、悪い病気もなくなり、人身御供などという恐ろしい 風習 もなくなった。里人たちは、 「 浪人さん、ありがとうございました。どうか、この里に住んでもらえないでしょうか ? 」 と言って、浪人を 歓迎 したのだが、浪人は、「 ありがたい話ですが、 特定 の場所に住むのは、私の 性分 に合いません。私は、風に身を 任せて浪浪 の旅を続けます 」 と言って、里人たちに 惜しまれ ながら、この里を去っていったという。

参考 『 三本木町誌 下巻 』
現地で採集した情報


“ 人身御供になった浪人 ” 写真館

三本木町誌 下巻には、 「 此の地方では三面観音様及子安観音様の祭日を毎年三月十七日と定め、草餅を供え近年まで祭典を執行したと語つている 」 とある。 子安観音 は現存しているのだが、三面観音に関しては、その存在が確認できなかった。


赤丸が、子安観音堂。三本木町誌 下巻には、 「 三面観音様及子安観音様の祭日を毎年三月十七日と定め 」 など、具体的な記述があるので、三面観音が 架空 のものである可能性は低いと思われる。もしかすると、子安観音堂の中に子安観音と一緒に 安置 されているのかもしれない。


子安観音堂の近くにある、 天性寺 の副 住職 に、この伝承のことを聞いたのだが、 「 ん 〜 、聞いたことがないですね … 」 とのことであった。


平成23年12月29日(木)掲載