ちょっと困ってしまう … 、狐の恩返し |
大崎市/三本木 |
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昔、この里を流れる 鳴瀬川 の近くに、 お産 の 名医 が住んでいた。その名医は、お産の連絡があると、すぐに、近くに住んでいる、 “ 吉ちゃん ” という 人力車夫 に 依頼 して、昼でも夜でも、たとえそれが、山の奥にある 一軒家 であっても、急いで 駆けつけて 、 丁寧 に 診察 した。 ある日の真夜中、名医の屋敷の玄関の戸を激しく 叩く 者がいたので、名医が、玄関まで行ってみると、その者が、 「 先生 ! 私の家族が御産で苦しんでいるので、どうか、助けてください ! 人力車は、私が 手配 しておきました ! 」 と、叫んでいた。しばらくすると、吉ちゃんが来たので、名医は、 人力車 に乗って、その者の屋敷に急いだ。 二人が、その者の屋敷に 到着 すると、待っていた 家人 が 出迎えて 、すぐに、大きな 薄暗い 部屋に通された。すると、その部屋にいた 産婦 が、お産の 激痛 に苦しんでいたので、 早速 、名医が診察を始めると、まもなく、玉のような 赤ん坊 が生まれた。名医は、喜んでいる家人らと 共に 、しばらくの間、赤ん坊を 見守って いたのだが、母子ともに健康そうだったので、 「 あとは、 産婆 さんに 任せて 、私たちは帰ります 」 と言って、帰ろうとした。すると、家人が、 「 先生、お待ちください。 お粗末 なものですが、どうぞ、 召し上がって いってください 」 と言って、 立派 な 膳 を 揃え 、 祝儀袋 をわたした。名医と吉ちゃんは、その 好意 を 素直 に受け、その後、酒を飲んだこともあって、たいへん 上機嫌 で自宅に帰った。 翌朝、吉ちゃんが、昨夜もらった祝儀袋をあけてみると、中には、 木の葉 しか入っていなかった。 狐 に 騙された と思った吉ちゃんは、名医の屋敷を 訪ね 、 「 先生 ! 昨夜の御産は、狐たちの御産だったんです ! 駄賃 だと思った 銭 は、木の葉でした ! 」 と叫んだ。すると、名医は、 「 そんなことが、あるもんか ! 」 と叫びながら、自分の祝儀袋をあけてみると、不思議なことに、こちらには、 本物 の札が入っていた。 このことがあった前日、この里で結婚式があったのだが、そのとき、 祝宴 の席に運ぶはずだった膳が、いつの間にか、なくなっていたということがあった。すぐに、みんなで膳を探したのだが、結局、膳を見つけることはできなかった。そのため、 「 不思議なこともあるもんだ … 」 と、ちょっとした 噂 になっていた。じつは、これは、狐たちが、膳と祝儀袋を運ぼうとしていた 女中 を騙して、その膳と祝儀袋を屋敷の外に運ばせたのであった。そして、その場所で、名医と吉ちゃんに 御馳走 するというのが、狐たちの計画であった。 また、ある夜、狐が、名医の屋敷の 廊下 に、 お世話 になった 恩返し にと、 一羽 の 雉 を置いていったことがあった。名医が、このことを吉ちゃんに話すと、吉ちゃんは、 「 あの夜の御馳走は、やっぱり、狐たちが、あの結婚式から盗んだものだったのかもな … 」 と 呟き 、名医の方も、 「 そういえば、あの御産のときは 慌てて いたので、気づかなかったが、今、考えてみると、産婦の 腰 のさわり 具合 が、おかしかったなぁ … 」 と呟いた。その後、名医は、木の葉で 送迎 をさせられた吉ちゃんに、本物の銭を 払い 、さらに、先日、結婚式で狐の被害を受けた方には、狐たちからもらった祝儀袋を、そのまま、お返ししたという。 平成24年3月13日(火)掲載
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