伝承

弘法様の清水は酒の味
大崎市/三本木桑折

   昔、この里に、ある貧しい 百姓 が住んでいた。その百姓は、 貧乏 で金がないにもかかわらず、毎日、酒に 泥酔 して屋敷に帰ってきたので、 家人 たちは、 「 まさか、酒を盗んでいるんじゃないだろうな … 」 と思い、たいへん心配していた。そこで、家人たちは、その百姓に、 「 いったい、どこで、お酒を飲んでるの ? お金はどうしてるの ? 」 と、聞いてみたのだが、百姓は、 「 大丈夫 だから。大丈夫だから 」 と言って、その後も、毎日、泥酔して帰ってきた。

   ある日、心配した息子が、父親を 尾行 したところ、父親は、 三本木桑折山岸 の道から少し入ったところで立ちどまり、 周囲警戒 しながら森の中に姿を消した。そして、そこに 湧いて いる 清水 を、息もつかずにゴクゴクと飲みはじめた。しばらくして、父親が、その場所を離れるころには、すっかり泥酔して、 千鳥足 になっていた。父親が去った後、 不審 に思った息子が、その清水を飲んでみたところ、不思議なことに、たいそう 美味しい 酒であった。

   酒が大好きな父親は、翌日も、 “ 酒 ” を飲もうとして、その場所に行ったのだが、いつの間にか、ただの清水になってしまっていた。ガッカリした父親が、 寂しそう肩を落とし仕方なく 屋敷に帰ったとき、息子が、 「 お父さん、このまえ、お父さんを尾行して、あの清水のことを知ったんだけど、どうして、あの清水は、酒の味がするの ? 」 と聞いたところ、父親は、 「 あれは、 “ 弘法水 ” といって、たいへん、ありがたい 御神水 だ。もう、酒の味はしないけどな … 」 と答えたという。

参考 『 三本木町誌 下巻 』
現地で採集した情報


“ 弘法様の清水は酒の味 ” 写真館

三本木町誌 下巻には、 「 その昔、三本木町字桑折の山岸に弘法水と呼んでいた 綺麗 な水の湧き出る所がある。 古老 のいい伝えによると弘法様の御用水で、 有難い 御神水であると語つていた。この水は何時も 絶間なく 、冬は暖かく夏は冷たく氷のようで、ここを通る人々は 勿論 、地元の民家の飲料水不足の時は何時も 汲みに 来て役に立てるので お授け 下さつた有難い御神水であると語つていた 」 とある。


平成24年5月20日(日)掲載